シーナリーハウス



ブログ

松木 淳也

2024.5.8 new

エアコンの容量選定

エアコンの容量選定

こんにちは、設計の松木です。

本日はエアコンの容量選定について記載いたします。

エアコンのカタログをみると畳数表示が明記されていますが、これは1964年当時の住宅性能における部屋サイズの目安を示しており、その当時は無断熱かつ隙間だらけの住宅があたりまえの状況でした。したがって、現在の高性能住宅においてカタログに記載のある畳数表示の機器をそのまま導入すると過大な機種選定となってしまいます。

メーカーカタログによる畳数ごとの仕様表。畳数ごとに冷房・暖房能力の他、消費電力などが記されている。

 

そこで、今回は現在の性能値に合せた建物の場合にどのくらいの容量のエアコンを選定すべきかを把握するために計算とシミュレーションソフトを使い検証してみようと思います。

今回の検討モデル 平面と外観

検討するモデルの性能条件を以下として計算を行っていきます。

計算地域:大分市、Ua値:0.45(HEAT G2グレード)、暖冷房する床面積:70m2(42畳)、C値:0.5

※Ua値は断熱性能値を表し、数値が小さいほど断熱性能が高い家となります。

Ua=建物の熱損失量(換気は含まない)/外皮面積

C値は気密性能値を表し、数値が小さいほどすきまが少なく気密性能の高い家となります。(数値は現場で測定を行うことで出ます)

 

まず、エアコン容量を算定するためには、建物性能値と室内の熱負荷を把握する必要があります。

室内の熱負荷に関しては日射熱の影響に関わる建物配置、形状、開口の位置・サイズ・仕様、庇の有り無しなどにより変動してきます。

暖房負荷算定においては上記の日射熱の条件は考慮せず求めることで、安全側での計算になってきます。

対して、冷房負荷算定時には上記の日射熱を考慮して検討する必要があります。今回、暖房能力の算定は計算式を用い、冷房に関してはより精度を出せるホームズ君のソフトを用いて検討していきます。

 

まずは暖房負荷(必要な暖房能力)の検討です。

算定に用いる計算式は精度が高いと言われている株式会社 松尾設計室 松尾和也氏の計算式を拝借して求めていきます。

必要暖房能力=(Q値+C値/10)×暖房する床面積×(設定室温-算定する地域の年間最低温度)

設定室温は適温とされる20℃、算定する地域(大分市)の年間最低温度=-2℃。

※Q値はUa値同様に断熱性能値を表し、数値が小さいほど断熱性能が高い家となります。

Q=建物の熱損失量(換気を含む)/延べ床面積

2013年の省エネ基準改正以降、断熱性能を評価する指標としてUa値を用いることが一般的となった※ことから、まずはUa値より換算してQ値を出します。

(Q値からUa値へ算定方法が変わった理由として、床面積が小さいと数値が大きく出ることや、外観形状の複雑な建物においては実際よりも小さい数値として出ることより外皮面積をベースにした算定になったと言われています)

換算計算式は概算計算であり、いくつか存在する為、今回は床面積毎に式を調整しているホームズ君から出ている以下の数式を採用していきます。(https://manabou.homeskun.com/syouene/report/ghikaku-ua_qchi/)

Q=2.8592×Ua+0.4569

Q= 2.8592×0.45+0.4569=1.74W/m2・K

 

Q値がでたところで、条件設定をした数値を入れて必要暖房能力の計算を行います。

必要暖房能力=(1.74+0.5/10)×70m2×(20℃-(-2)℃)=2,757W

エアコンは定格出力の6~8割くらいの負荷での運転が高効率と言われていることより、2,757/0.7=3,939Wを採用。

カタログの数値より暖房は12畳用でまかなえることになります。

 

次に冷房負荷(必要な冷房能力)の検討です。

こちらはホームズ君のソフトを用いて検討していきます。

設定温度は夏場の適温とされる27℃、算定する地域(大分市)の年間最高温度=37℃。

断熱材や開口の仕様・位置・サイズ、屋根形状などを入力し冷房負荷シミュレーションをかけます。

冷房期のシミュレーション結果より、冷房負荷(必要な冷房能力)=2,736W

定格出力の6~8割くらいを狙うと、2,736/0.7=3,909W

カタログの数値より冷房は14畳用でまかなえることになります。

必要暖房、冷房能力の検討結果より、この建物においては14畳用のエアコンでまかなえることになります。

暖冷房面積70m2:42畳において14畳でまかなえることとなり、カタログ記載の畳数表記の1/3の結果となりました。

 

エアコンを用い、夏場・冬場に快適な暮らしをするうえでは機器の容量選定と、適切な位置に設置することが大切になります。一般的な壁掛けエアコンは、設置位置より高い部分の空気を冷やすことは出来ず、3m以上 下にある空間を暖めることも難しいことを考慮して最適な位置に設置しましょう。

今回は平屋を例に検討しましたが、プラン(2階建てや中庭型、廊下を挟んで各居室のある建物など)によっては定格能力の合計はそのままに、小さいエアコンを2台設置することで温度ムラを抑え、より快適な生活ができることも考えられます。

 

本日はこちらで失礼致します。